中嶋一貴TDから見たふたりのレースエンジニア「瞬発力がすごい」「視野が広い」と同じ負け嫌いでも異なる個性
WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスを戦い、目下ドライバー、マニュファクチャラーともに2026シーズンをリードしているトヨタレーシング。第6戦富士を大逆転で制し、残る今週末の第7戦バルセロナ、第8戦モンツァでのタイトルに向けた戦いに俄然注目度が高まっているが、7号車と8号車、2台のTR010ハイブリッドを司るふたりのレースエンジニアにも注目したい。
■最初から決断力があった7号車担当のバスティ
セットアップの煮詰めやトラックオペレーション中心となるレースエンジニア。トヨタレーシングでは、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組の7号車をバスティアン・ケルンストック、そしてセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組の8号車をライアン・ディングルが担当している。
オートスポーツwebではそんな彼らの性格に迫るべく、 バスティ編 、 ライアン編 と、中嶋一貴チームディレクターによるインタビュー連載を掲載してきたが、ここではその“番外編”として、『一貴チームディレクターから見たふたりのエンジニア評』をお届けしよう。ぜひ、2本のインタビューとともに読んでみていただきたい。
現在7号車担当のバスティエンジニアについては、「前からよく知った間柄」だと一貴TD。以前は8号車のパフォーマンスエンジニアとして、一貴TDの現役時代を支えていたこともあるのだという。
「7号車のレースエンジニアになると聞いた時は、どこまでやれるのかな? と思っていた部分も正直に言うとありました」
「でも、実際になってみるとコミュニケーションもうまくできているし、何よりも決断力がある。もちろん経験が浅かった頃はそれが裏目に出た時もありましたが、最後に何かを決めなければならない時に、自分が持っている情報と経験で決断できることって、レースエンジニアにとってすごく大事な要素だと思うんです。何でもかんでも人に聞いて決めていたら仕事は進まないし、レースのスピードに全然ついていけないので。バスティはその瞬発力がすごいですし、あと、めちゃくちゃ負け嫌いでもあります」
トヨタレーシングWECチームで7号車のレースエンジニアを務めるバスティアン・ケルンストック
■「感情に振り回されない」8号車担当のライアン
一方のライアンエンジニアは、かつて日本のレースでキャリアを積んだこともあり、読者の皆さんにはお馴染みの存在だろう。ただ、その性格の印象は、実際には少し違うかもしれないという。
「ライアンについては、日本の皆さんもとても柔らかい印象を持っていると思います。でも、実際は彼もすごく負け嫌いで、あまり顔には出しませんが、レースに勝ちたいという思いは人一倍強い。それでも、あまり感情に振られすぎず、人との繋がりやコミュニケーションをすごく大事にして仕事を進めています。8号車のドライバーたちは非常に要求度が高くクセも強めなので大変そうだなと思う時もありますが(笑)、辛抱強く、粘り強くやってくれているのですごく頼りになります」
「あと、WECではレースエンジニアが直接戦略を考えるわけではないのですが、彼は自分だったらこういう戦略をとるなど考えながらやっていますし、レース中に戦略担当のエンジニアと話し合いながら、全体を見てレースを戦っている印象がありますね」
8号車を担当するライアン・ディングルエンジニア
今回の対談企画では、事前に両エンジニアに性格診断(いわゆるMBTI)に回答してもらったが、その結果はふたりとも同じ『指揮官』に。とはいえ、「仕事の進め方はそれぞれに異なる」と一貴TDは証言する。
「バスティはとにかく決断が早く、新しいことにも積極的にトライするタイプです。一方、ライアンは経験豊富なので、もう少しドンと構え、広い視野で全体を見ながら、いろいろなことを考えて仕事をしている印象ですね」
「ただ、レースウイークは2台を同時に並行して走らせるので、彼らがそれぞれ好き勝手やっているわけではありません。もともと8号車でレースエンジニアとパフォーマンスエンジニアという間柄で一緒に仕事をしていたこともあるのかもしれませんが、すごく仲がいいというか、“お互いを出し抜こう”みたいなこともなく、2台でどのようにやっていったら良いかを本当にオープンに、自然にやってくれています。どちらも本当に負け嫌いでキャラクターもちょっと違いますが、それでもとてもいい関係性ですし、チームとしてありがたいことです」
トヨタレーシングの2台のTR010ハイブリッド 2026ル・マン24時間
今季、トヨタレーシングは『For the Engineering Race』という新しいスローガンを掲げて戦っているが、一貴TDは「エンジニアリングに関わる人たちが今まで以上に注目されて、光が当たるようになって良かった」とその”効果”についても触れた。
「そしてライアンやバスティのようなエンジニアに憧れ、自分たちもそうなりたいと思う若い人たちが多くいることが分かり、僕からしてもすごく勇気づけられました。そういう人たちに向けて、このスローガンが背中を押すような言葉になればいいなと思っています」
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