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排気量わずか356ccで時速110キロを叩き出す。スズキ「フロンテ360」が英国で約101万円

空冷パワーユニットをリアに配置。月産目標を大きく超えたLC10型の革新性

排気量はわずか356cc。それでも最高出力25PS、最高速度110km/hを実現したのが、1967年に登場したスズキ「フロンテ360」(LC10型)だ。エンジンをリアに搭載するRR方式を採用し、軽自動車の走りを追求したこのモデルが、英国のボナムズ「Goodwood Revival」オークションに登場。1969年ごろのフロンテ360デラックスが4830ポンド(邦貨換算約101万円)で落札された。

356ccから25馬力を発生。最高速度110キロを達成した2代目のパッケージング

フロンテの歴史は、1962年3月に登場した「スズライト フロンテ」から始まる。その後継モデルとして1967年に登場した2代目は、ボディデザインを一新するとともに、エンジンを車体後部に搭載するRR方式を採用した。軽自動車で初となる空冷2ストローク直列3気筒エンジンを搭載したことも、大きな特徴だった。

排気量は356cc。最高出力は25PS/5000rpmで、最高速度は110km/hに達した。トランスミッションは4速MTで、後輪を駆動する。限られた排気量のなかで動力性能を追求したパッケージングには、小型車であっても高速走行を妥協しない当時のスズキの開発姿勢が表れている。

当時の軽自動車は、車体寸法や排気量に制約があるなかで、実用性と走行性能を両立させる必要があった。LC10型は車体の軽量化を図り、高速性能や加速性能に重点を置いて開発されたモデルだ。スズキの公式資料でも、最高速度110km/hに加え、100km/hでの巡航を可能にしたことが紹介されている。

発売後は月間3000台という生産目標を上回り、月に約8000台を販売するほどの人気を集めたとされる。小さな車体に独自のメカニズムを盛り込み、走りにも力を注いだフロンテは、当時の軽乗用車市場で存在感を高めていった。

新車時は34万円台。東京店頭渡し価格と3つのグレード展開

今回出品されたのは、1969年ごろのフロンテ360デラックス。車台番号はLC10 183605で、英国ではナンバー登録されていない。

当時の価格資料によると、東京地区の店頭渡し価格はデラックスが34万3000円。スタンダードは31万8000円、スーパーデラックスは37万3000円に設定されていた。デラックスはその中間に位置するグレードで、購入者が予算や装備に応じて選べるラインアップを構成していた。

現代の軽自動車と比べれば、排気量も車体も小さい。しかし、RR方式やオートバイ技術で磨き上げた2サイクル3気筒エンジンを採用したLC10型は、限られた条件のなかで走行性能を高めようとした時代の工夫を伝えている。今回のデラックスも、そうした日本の軽自動車史を振り返る手がかりとなる1台だ。

現代の軽自動車とは異なるパッケージングだが、小さな車体に独自の技術を盛り込んだ点は、LC10型フロンテの大きな特徴といえる。

グッドウッド併催の競売で4830ポンド。約60年前の日本の軽自動車が海を渡った足跡

このフロンテ360デラックスは、2026年9月19日に英国チチェスターで開催されたボナムズ「Goodwood Revival: Collectors’ Motor Cars and Automobilia」に出品された。エスティメートは3000〜5000ポンド(邦貨換算約63万〜104万円)で、最低落札価格を設定しないノーリザーブでの出品。最終的には、手数料込み4830ポンド(同約101万円)で落札された。

出品資料で確認できる付属資料は、日本語の雑誌記事のコピーなどに限られる。詳しい来歴や整備履歴については、公開情報からは十分に把握できないため、今回の落札額だけを根拠に、車両の希少性やコンディションを評価することはできない。

それでも、かつて日本で日常の移動を支えた小さな軽自動車が、英国のクラシックカーオークションに登場したことは興味深い。356ccのエンジンから25PSを引き出し、リアに搭載するという独自の構成を採用したフロンテ360。約60年前に誕生したLC10型フロンテは、排気量や車体サイズに厳しい制約があった時代に、軽自動車でどこまで走りを磨けるかを技術で問いかけた足跡を今に伝えている。

※為替レートは1ポンド=約208.33円(2026年10月11日時点)で換算

■ 注目ポイント(3点)

・新車当時価格34万3000円の昭和軽が、英国グッドウッドのオークションで約100万円にて落札

・排気量356ccの空冷2ストローク直列3気筒エンジン(25PS)をリアに積むRR駆動レイアウト

・最低落札価格なし(ノーリザーブ)で出品され、当時の日本車の技術力を英国で証明した歴史的背景

■ スズキ フロンテ360デラックス(1969年式)スペック・主要諸元一覧

・ベース車両:1969年式 スズキ フロンテ360デラックス(LC10型)

・車台番号:LC10 183605

・エンジン:356cc 空冷2ストローク直列3気筒

・最高出力:25PS

・駆動方式/トランスミッション:RR(リアエンジン・リアドライブ)/4速MT

・最高速度:110km/h

・新車当時価格:34万3000円(東京地区店頭渡し価格/デラックス)

・オークション落札価格:4830ポンド(邦貨換算約100万円/1ポンド=約208.33円換算/手数料込み)

・出品条件:ノーリザーブ(最低落札価格なし)

・開催オークション:Bonhams Goodwood Revival: Collectors’ Motor Cars and Automobilia(2026年9月19日開催、英国チチェスター)

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